魔法のことば
Magic
Words
柚木沙弥郎 絵
1994年 Craft Space わ刊
2000年 福音館書店より復刊
アメリカインディアンの口承詩を日本に紹介した金関寿夫「魔法としてのことば」(思潮社)から、イヌイットに伝わる一篇押しを元に構成した絵本です。大人にも、少し大きくなった子どもにも、内部の深いところに染み入る一冊。
柚木の絵本第一作目となるこの「魔法のことば」は、スイスで1996年度<子供の宇宙>国際図書賞を受賞しました。
ずっと、ずっと大昔
人と動物がともにこの世に住んでいたとき
なりたいと思えば人が動物になれたし
動物が人にもなれた。
だから時には人だったり、
時には動物だったり、
互いに区別はなかったのだ。
そしてみんなが同じことばをしゃべっていた。
その時ことばは、みな魔法のことばで、
人の頭は、不思議な力をもっていた。
ぐうぜん口をついて出たことばが
不思議な結果をおこすことがあった。
ことばは急に生命をもちだし
人が望んだことが
ほんとにおこった―――
したいことを、ただ口に出して言えばよかった。
なぜそんなことができたのか
誰にも説明できなかった。
世界はただ、そういうふうになっていたのだ。
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